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山形市の水道は、現在の松原浄水場わきを流れる馬見ヶ崎川の伏流水を水源として、塩素消毒を施し大正7年に創設認可を得て、大正12年(1923年)5月に通水を開始しました。このことから、松原浄水場は山形市水道事業の発祥の地といえます。
以来、市域の拡大と産業の振興・経済成長により需要が増え、昭和20年代後半に蔵王山系の不動沢に水源を求め、これを緩速ろ過方式で処理する第一次拡張事業に着手しました。
さらに、昭和30年代後半に入ると蔵王ダムに水源を求め、これを急速ろ過方式で処理する第二次拡張事業が実施されることになり、新設の旧松原浄水場がこの地に建設され昭和42年に完成しました。
このように、旧松原浄水場の施設は大正年間より運用されているため、場内の構造物は老朽化が進み、なかでも緩速ろ過池等は70年以上にわたって使用している状況にありました。また、中心施設である急速ろ過系でも、昭和42年稼働以来35年を経過しようとしており、大規模な修繕工事が必要であるにもかかわらず、稼働率が高いため処理工程を休止しての改修が極めて困難な状況でした。
また、旧松原浄水場は、通水当時の馬見ヶ崎川伏流水に加え、不動沢と蔵王ダムの新たな水源を加えて給水量を増やしてきたため、馬見ヶ崎川伏流水は塩素消毒のみ、不動沢表流水は緩速ろ過法、蔵王ダム貯留水は急速ろ過法と3通りの方法が混在することになり、非効率的になっていました。
旧松原浄水場管理本館(昭和46年頃)
そこで、これらの問題を解決するため、松原浄水場を全面的に改築し、新たな松原浄水場を新築することなりました。
新松原浄水場の建設工事は、既存施設を稼働させながら逐次解体し建設する方法によって、1「3方式水処理形態の統合」2「給水しながらの現地全面更新」3「無人化による自動運転」を建設の柱に、「安全・安心、そして効率化を追求した給水体制の確立」を目指して施工され、平成13年度に着工し平成17年度末に完成しました。
建設中の新松原浄水場
完成した新松原浄水場
平成17年11月20日に「山形市新行財政改革プラン」が発表されました。このプランの重点改革事項として、下水道事業の維持管理業務の効率化を図るため、地方公営企業法の全部を適用して、水道事業との統合を行うことが盛り込まれました。
平成21年3月20日から下水道部は市役所庁舎から山形市南石関の水道施設管理センターに移転し、4月1日に新しい組織「山形市上下水道部」としてスタートしました。組織の統合によって一時的に移転に伴う費用が増加したり、事務的な手続きが煩雑になったりしましたが、窓口が集約できたことや給水装置と排水設備の審査・検査が同時に行えるようになり、市民サービスが向上しました。
その後、平成25年度からは、上水道で以前から導入されていた「水道管路情報システム(マッピングシステム)」に下水道情報を入力することで、下水道管路図面をコンピュータで管理し、管路情報を共有化することが可能となりました。これによって、下水道事業の日常における維持管理業務に利用できるほか、上水道と下水道で別々に行っていた「埋設証明書」の発行が一元管理でき、一つの窓口で対応できるようになりました。
平成25年には『健全な水循環を守り、豊かな環境と安心を未来につなぎます』を基本方針とし、令和4年度までの10年間を計画期間とする「山形市上下水道事業基本計画」が策定されました。
山形市では、「山形市第7次総合計画」の基本構想を達成するために、策定した現経営計画の重点政策「環境にやさしいまちづくり」の中で、「再生可能エネルギー活用と地球温暖化対策推進」を掲げ、その主要事業として太陽光発電や小水力発電、バイオマスの利活用に取り組むこととしています。地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき策定した「山形市地球温暖化対策実行計画」では、「再生可能エネルギーの普及および循環型社会の構築」を基本方針のひとつに掲げています。
山形市上下水道部として、平成25年3月策定の「山形市上下水道事業基本計画」に基づき、上水道では、小水力発電を松原浄水場に設置、上下水道施設管理センター内に太陽光発電設備を設置、下水道では浄化センターの消化ガス発電に加え新型燃料電池を設置しています。
小水力発電は、水源となっている蔵王ダムの第四減圧井からの圧力を利用し、小水力発電施設において発電を行っています。水車出力は最大140Kwで、年間の発電量は約100万Kwhとなり、これは一般家庭の約300世帯分の電力に相当します。小水力発電は、季節や天候に左右されることなく24時間発電が可能で、浄水場内で使用する概ねの電力を賄うことができるほか、災害による停電時でも安定して水道水を届けることができます。
上下水道施設管理センターに設置した太陽光発電設備は、センター内の車庫と研修施設の屋根に太陽光パネルを設置し発電を行っています。設備設置工事は平成26年度から27年度にかけて実施され、発電された電気は施設内で使用されています。
浄化センターでは以前より消化ガス発電を行い、施設内で利用されてきました。消化ガスは下水を処理する過程で発生する消化ガスを燃料にエンジンを回し発電するシステムで、消化ガス発電設備は昭和62年に着工し翌63年に完成し運転を開始しています。しかし、給水量の増加に伴い下水の汚泥量も増加することになり、消化ガスが大量に発生し、消化ガス発電だけでは全量を利用することが不可能となりました。そこで検討されたのが、燃料電池式発電システムの導入でした。平成14年に東北で初、下水道事業での導入は全国2例目となるリン酸型燃料電池式発電が導入されました。導入当初は発電機が2基でしたが、現在は4基体制となり平成25年度には場内の省エネ化・効率化も相まって、電力自給率は年間平均で62.3%と過去最大となりました。
山形市の水道事業は、令和5年度に通水開始から100年を迎えることとなり、公共下水道事業は、昭和40年の供用開始からまもなく60年を迎えようとしています。山形市の上下水道事業では、これまで様々な取り組みにより、健全経営の維持や経営基盤の強化に努めてきましたが、事業を将来にわたって持続させていくためには、長期的な視点に立ち、更なる経営改善策を講じていく必要があります。
令和5年度4月からスタートする「山形市上下水道事業基本計画 Nextビジョン2023」は、厚生労働省の「新水道ビジョン(平成24年策定)」および国土交通省の「新下水道ビジョン(平成26年策定)」を反映し、関連計画である山形市の長期ビジョン「山形市発展計画2025」を踏まえ、従前計画の取り組みを適切に継承するものです。また、市民のくらしを支える上下水道を新たな100年につなぐことができるよう、100年後の将来像を見据え、将来像の具現化に向けた今後10年間に関する新たな計画を策定しております。